Copilot for Microsoft 365で「PowerPoint」を使いこなす
~仕事を効率化する新たなツール~
Microsoft 365は、ビジネスや個人の生産性を向上させるためにも欠かせないツールセットです。最近、MicrosoftはこのMicrosoft365に対応した新しいAI支援ツール「Copilot」を追加しました。
Microsoftは、Copilotを上手に活用することで大幅な仕事効率化の可能性を提示しています。そこで本記事では、まずCopilotの基本情報をまとめたほか、PowerPointで実際にCopilotを使用してみました。
Copilotの実際の使用感を知りたい方の参考になれば幸いです。
Microsoft Copilotとは?各プランの違い
Microsoft Copilotは、Microsoftが提供するWord、Excel、PowerPoint、Outlookなどのあらゆるサービスに統合されたAI支援ツールです。仕事の生産性向上を目的に追加された機能で、活用するにはMicrosoft365のライセンスを取得するほか、個人向けまたは企業向けのプランから選択して使用します。
以下にMicrosoft Copilotのプランと内容について表にしてみました。使用したい機能を選び、適切なプランを選択しましょう。
※以下に記載した月額料金は、2024年6月時点のものです[1]
プラン | 内容 |
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【無料】個人向け Copilot | このプランでは以下の機能に対応しています。
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【有料】個人向け Copilot PRO | 1ユーザーあたり月額料金¥3,200です。このプランでは、無料プランの機能に加え、以下に対応しています。
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【有料】企業向けMicrosoft Copilot for Microsoft365 | 1ユーザーあたりの月額料金は¥4,497、年間契約の場合は¥53,964です。このプランでは「Copilot PRO」の機能に加え、以下に対応しています。
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上記の表からもわかるとおり、個人向けプランに含まれる機能は、すべて法人向けプランで利用できるようになっています。また個人向けプランとの違いとして、Teamsへの対応や、外部に情報を提供することなく社内の情報をもとにCopilotを利用できることなどもあげられます。
ここからは、法人向けである「Microsoft Copilot for Microsoft365」のPowerPointの活用についてご紹介していきます。
PowerPoint for Copilotの機能
では、PowerPoint for Copilotでは具体的にどのようなことができるのでしょうか。 公式サイトによると、以下のようなことができるようです。[2]
1.新しいプレゼンテーションの作成 Copilotでは、プレゼンテーションの内容や構造を指定して、プレゼンテーションを自動生成できます。 2.プレゼンテーションの要約 長いプレゼンテーションや複雑な内容を簡潔にまとめられます。 3.プレゼンテーションの編集・整理 プレゼンテーションのスライドを並べ替え、スライドの内容を編集・整理できます。 4.Copilotで組織のロゴなどが使用できる Copilotでは組織のロゴやカラースキームを使用して、プレゼンテーションをカスタマイズできます。 |
実際につかってみた
この情報だけでは業務で活用できるレベルなのかがわからないので、実際に資料を作成してみます。今回は、次のようなテンプレートを用意してみました。
用意したテンプレートを用いてスライドを作成してくれるのも、このCopilotの特徴です。
テスト1:プロンプトに直接打ち込み、新規のプレゼンテーションを作成する
まずはじめに、プロンプトに直接スライドに反映してほしい内容を打ち込んでみました。その際は、弊社のHPに掲載している会社概要を使用しました。
結果は上記の通りです。内容を理解して一枚の写真を追加してくれていますが、文字と被っています。おまけにスライドの内容もコピー&ペーストしたのと変わりがなく、このままでは使えません。
さて、ではどうしたらよりよいスライドを作成してくれるのでしょうか?次からさらに検証していきます。
テスト2:Wordと連携して新規のプレゼンテーションを作成する
よりよいスライドを作るべく次に試したのは、Wordとの連携です。まず、スライドを作成してほしい範囲をコピー&ペーストでWordに貼り付けました。
以下の通りです。
このファイルを、SharePoint上に保存します。
それからCopilotを立ち上げると、下記の画像のように「ファイルからプレゼンテーションを作成」という選択肢が表示されます。
指示に従いながら操作すると、プロンプトにファイルが指定されます。今回は、「ためし.docx」という名前のファイルです。
そして、このプロンプトを実行すると、次のようなスライドを作成してくれました。
なんと、アジェンダまで作ってくれて、表形式で会社概要と沿革をまとめてくれています。最初に指定したテンプレートの表紙を使っていないことは残念ですが、スライドの下書きとしては十分ではないでしょうか。
テスト3:作成したプレゼンテーションを要約してみる
次に作成したプレゼンテーションを使用して、要約機能を試してみます。Copilotに上記のプレゼンテーションを要約してもらった時の結果は以下のようになりました。
スライド二枚にわたってびっしりと書かれていた内容が、簡潔にまとめられました。また、内容も重要な点をしっかりと抑えられている印象です。
テスト4:プレゼンテーションの自動作成に必要なテンプレートについて
必要なスライドマスターは下記のとおりです。
1.タイトルスライド:タイトル プレースホルダー(例:図 1)
2.タイトルスライド:タイトル+画像プレースホルダ-(例:図 2)
3.コンテンツスライド:タイトル プレースホルダー + コンテンツ プレースホルダー(例:図 3)
4.タイトル プレースホルダー + 2 つのコンテンツ プレースホルダー(例:図 4)
これらを作成しておかなければ、copilotはユーザーが望むスライドを作成できる可能性が低くなります。
PowerPoint for Copilotにできること・できないこと
最後に、実際にCopilotを使ってみてわかったできること・できないことをいくつか挙げてみます。
【できること】
①ファイル内の内容から質問に答える
スライドの中で定義している言葉を抽出する、などは可能。例えば、スライドの中でA=Bと記載していた場合、「スライドの中で定義したAについて説明してください」といった具合でcopilotに質問すると、答えてくれます。
②内容の要約
ただし、対象はテキストのみ。
③目次スライドの追加
「以下についてスライドを追加:目次」で目次のスライドを追加できる。この書き方をしないと、copilotが認識してくれない可能性があります。
④docxファイルからスライドを作成できる
docxファイルを指定し、箇条書きレベルの情報からでもある程度構造を反映できる。
【できないこと】
①図は認識できない
「nページの図について解説してください」という命令は現状、できませんでした。
②翻訳はできない
現状は「和訳して」などの命令は、実行してもできませんでした。
【ポイント】
実際にCopilotに命令するときは、「どういったプロンプトにするかをしっかりと考える必要がある」というのが、使ってみて感じた印象です。
曖昧な日本語では実行してくれなかったものも、言葉に気を付けることによって実行できたケースも散見されました。
Copilotは今後の開発、プロンプトの工夫によって革新的なツールになりうる
本記事では、Microsoft Copilot for PowerPointの特徴や実際に使ってみた所感を述べました。Copilotは自然言語処理技術を用いてプログラミングコードの生成や補完を行うツールですが、まだ開発段階にあり、改善の余地が多いというのが現在の印象です。
Copilotを有効に活用するためには、その特性や限界を理解し、注意深く検証しながら使用していく必要があります。まだできないことは多いものの、プロンプトの工夫次第ではもっと上手く使えるようになるかもしれません。
Copilotに関する今後の研究や開発に期待したいと思います。
【参考文献】
2013年3月に北海道大学大学院情報科学研究科調和系工学研究室を修士で修了。ビルの入退室管理システム等のSEや開発を経験したのち、2023年4月より、電機メーカーから株式会社調和技研に転職。数値系の分野を担当。趣味はサッカー観戦と模型製作、ゲーム。最近は作りたい模型とやりたいゲームが多すぎて手が回らない模様。